マーケティングの基本は、顧客のニーズを満たすことです。顧客のニーズに応えることで、顧客から選ばれ、結果的に企業の収益を満たすことになります。マーケティングを売るためのテクニックだと言う人もいますが、言葉巧みに売りつけることはマーケティングとしては好ましいことではありません。

製品市場に消費者の望む品質の商品を投入すれば、消費者はその製品を購入するでしょう。それによって企業は製造・販売費用を回収し、再生産を行うことができます。しかし、消費者が望まない製品を販売しても、それは買ってもらえず、企業は製造・販売費用を回収できません。その製品は市場から淘汰されます。結果として、市場には、消費者が望む商品で満たされ、社会的な厚生は増すことになります。

品質のよいものよりもマーケティングがうまくいったものが市場シェアをにぎることがよくあります。これは「マーケティングの失敗」ではなくて、マーケティングで解決すべき課題です

しかし、そううまくいくでしょうか?食品には、官能試験というのがあります。実際に食べ比べて、評価してもらうという試験です。この官能試験で、一つ星から五つ星までの食品があったとしましょう。その評価に従って、市場シェアが決まって良さそうですが、実際にはそうではありません。むしろ、一つ星の食品が市場を席巻したりします。消費者は、品質だけで商品を買うかどうかを決めていないからです。価格が高いか安いかもあるかもしれませんし、どこで買えるかということも売れ行きを左右します。そもそも、そんな商品を知っているかどうかも問題です。良い品質の商品が消費者に購入されるまでには、長い道のりがあって、そこを超えないと、買ってもらえません。それを導くのがマーケティングということになります。

言い換えれば、マーケティングがうまくないと、良い商品でもそう簡単には売れません。ということは、マーケティング・テクニックのある企業の商品は売れるが、そうでない企業の商品は売れないことにもなりかねません。消費者が本当に望む商品は、マーケティング・テクニックによる競争の中で、淘汰されてしまう可能性もあります。

これは「マーケティングの失敗」とでも言うべきものなのでしょうか。いいえ。これはむしろマーケティングで解決すべき問題なのです。マーケティングは、消費者が望む商品をつくり、その存在を知らしめ、顧客が買いやすい条件を整えることです。よい商品を売る場合でも、その努力が必要だと言うことなのです。

具体的にどんな努力が必要なのか、続いて検討していきましょう。