ただ乗りを乗り越えて

環境問題は、市場に任せていてもただ乗りの問題があるので、解決されません。企業が、いくら自発的に環境問題に取り組もうとも、その取り組みにコストがかかる限り、その活動の持続性は確保されません。市場の失敗です。

だから政府が出てこなければなりません。政府は、直接規制や経済的手段で企業活動をコントロールすることができます。政府でなくても、業界の自発的な協定というのもあるかもしれません。国際的な取り決めなどもあります。ただし、これも万能ではなく、ひとつはモニターの可能性の問題があります。ちゃんと各主体が規制を守っているか、どのくらい環境影響を与えているか、減らしているかなどを知るのはなかなか難しいです。また、制度を設計して運営するには、それ相応の人材と時間、場合によっては設備も必要となります。そのため、政府その他の主体が、人為的に企業の環境活動をコントロールできる範囲は限定されてしまいます。政府の失敗です。

市場でもダメ、政府でもダメなら、どうしたらいいのか?ということで、再び市場です。ただ乗りが可能であるにも関わらず、環境負荷の少ない製品を購入する消費者は増えてきているように見受けられます。金融市場では、エコファンドと呼ばれる商品の知名度が上がってきました。社会的責任投資(SRI)、ESG投資という言葉も生まれてきました。企業への環境への取り組みをもって、企業選択を行う新卒学生も増えていると言われています。企業の生産要素調達においても、自身の環境への取り組みのためにも、環境配慮型の生産要素を調達しなければならなくなってきました。環境に取り組んでいる企業の製品が選択され、資金調達が容易となり、しかも良い人材が得られるようになってきたということです。言い換えれば、製品市場、金融市場、並びに労働市場をつうじて、環境に取り組む企業が支持されるようになったということです。

「ただ乗り」の誘因を乗り越えて、環境に貢献する企業を支持する市場の動きが始まった

環境はただ乗りが可能だから、市場は失敗するのではなかったでしょうか?そうです、相変わらず、ただ乗りは可能です。しかし、それでも環境に配慮した製品を購入する消費者、エコファンドに出資する投資家、さらに就職は環境に取り組んだ企業に就職する労働者などが確実に存在し、しかも年々増えてきている野も事実です。すべての人がそうでないと、市場は失敗したことになりますが、それでも完全に失敗しているわけではありません。市場も政府も、それぞれ問題があるなら、お互いの長所を生かした対応をしようということです。環境に貢献度の高い企業が、市場の支持を得るマーケティング、ただ乗りの誘因を乗り越え、環境に対する支払いを厭わない層を増やすマーケティングが求められます。

この場合、単なる市場による解決ではなく、企業と消費者とのコミュニケーションが求められます。環境への取り組みは企業の外からは見えない部分も多いです。特に生産過程における環境への取り組みは見えにくいです。大気汚染や水質汚濁などの緩和は目立つかもしれませんが、CO2排出を減らしているとか、電気を節約しているとか、水を循環使用しているとかはなかなか、外からは見えません。製品の機能性などは、便益が製品に体化されているので、購入した消費者は、その便益を確認することができます。しかし、環境への取り組みはそうではありません。ですから、企業は、自らの努力を積極的に市場に伝えなければなりません。

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