記述統計:家計調査2020年(2)

前回に引き続き,総務省「家計調査」を記述統計していきます.

費目別ランキング(中分類)

前回よりも費目分類を細かく見ていきます.家計調査の費目は,時々見直されていて,2020年1月の改訂が最新です.

このうち,実支出の調査品目は約500種類ほどあり,それらはいくつかの費目に分類されています.最も大きな分類は,前回見た10費目ですが,もう少し細かな分類は50費目あります.

50費目の変化を一つずつ見ていくのは煩雑なので,何か工夫が必要です.今回は,2020年に特に増加した費目と減少した費目を知りたいので,ランキングで費目自体を取捨していきましょう.

変化率のランキング

2020年支出額の過去5年(2015~2019年)に対する変化率の大きな20品目を並べてみました.

保健医療用品・器具(ほとんどマスクでしょうね)がトップという結果となりました.続いて教養娯楽用耐久財(パソコンもこれに分類),家事用消耗品(トイレットペーパー騒動もありましたね.除菌に使えそうなリセッシュとかファブリーズもこれに入るのでしょうか?),家庭用耐久財(キッチン家電,空気清浄機,食器棚なんかがこれに入ります)という順番.

逆に減少した費目は以下のよう.

交通の減少率が最も大きく,和服教養娯楽サービス(映画とか,スポーツとか,旅行はこれ),シャツ・セーター類と続き,その次が外食です.

こうした変化率を見ることで,それぞれの財・サービスを提供している業界にとって,2020年がどれほど厳しかったかを推し測ることができます.

一方,家庭の目からは,2020年はどんな年だったかは,偏差値を使ったほうがよく見えるかもしれません.

偏差値のランキング

以下に示す偏差値は,過去5年平均と比較した2020年の変動幅を,過去5年の標準偏差で割って,10倍したものです.

偏差値が10だと,2020年は,過去5年間の当該費目の1標準偏差分だけ支出が増加したことになります.

費目によっては,年によって支出額がだいぶ異なるものもあるでしょう.そうした費目の変動幅大きくても,標準偏差も大きいので,偏差値はあまり大きくなりません.

毎年同じような額を支出している費目だと,それほど変動幅が大きくなくても,偏差値は大きくなります.だいたい同じような消費生活を送ってきたのに,突然2020年は変わった,ということです.視点が家庭にある,と言うのは,そういう意味です.

偏差値の高い費目を見ると,変化率とはだいぶ様相が違います.

酒類がトップに来ています.それまでも晩酌として,ビールや清酒や焼酎は飲まれていたはずですが,外出自粛で家でしか飲む機会が無くなり,否応なしに酒を買って自宅で飲むしかなくなったのでしょう.それまでの増減とは比べものにならないくらい支出が増えたということ,つまり飲酒についての消費パターンがガラッと変わったということです.

通常,偏差値は20もあると,かなり変化が大きいとみなされます.酒類の標準偏差は152.普通はこんな値は出ません.

続いて,肉類油脂・調味料穀類と,大きな偏差値となっています.いずれも調理する食材です.外食が減った分,増えた食費です.これだけ見ても,食生活の大きな変化が確認できます.

減少した費目の偏差値です.下着類の偏差値が突出しているのが意外です.下着類は,コロナにあまり影響されないような気がしますが,3~4月に支出額が大きく落ち込みました.例年の変化がほとんどない品目は,わずかな変化で偏差値が大きくなることがあります.

それ以外は,教養娯楽サービス外食交通洋服,と続き,直感的なイメージと一致します.

変化率と偏差値の比較

変化率と偏差値の関係をプロットしてみると,変化率と偏差値との関係がよくわかるかもしれません.

これは,支出が増加した費目です.横軸が偏差値で縦軸が変化率です.

両者がきれいに相関していれば,どちらの指標で変化を見ても同じなのですが,酒類肉類油脂・調味料は,変化率に比べて偏差値が大きいです.例年はそれほど支出額に変化のない費目と言うことです.

一方,保医療用品・器具教養娯楽用耐久財などは,変化率に比べて偏差値が小さいです.例年も,なにやかやと変動がある費目と言うことになります.

支出が減少した品目です.

多くの品目は,変化率と偏差値とがある程度相関しているようですが,交通費和服は,減少率の割りには偏差値は高くなく,下着類は,変化率は小さいけど,偏差値は突出しています.

いずれにせよ,それぞれの指標が何を意味しているのか,誰にとって意味のある数字なのかを考えながら,情報を集約していく必要があります.

おすすめ